「ホールドはちゃんと持ててるのに、気づいたら体がくるっと回って落ちる」——これ、ジムに通い始めて半年〜1年くらいの人から本当によく聞く悩みです。実はその多くが、フラッギングという足の使い方を知らないせいで起きています。今日はそのフラッギングについて、できるだけ実践的に解説していきます。
フラッギングとは?体の回転を止める"つっかえ棒"
フラッギングとは、片方の足をホールドに乗せずに空中に伸ばして、体の回転(バレ)を抑えるムーブのことです。両手両足の4点のうち3点しか壁に触れていない状態でバランスを取る、と言うとちょっと難しく聞こえますが、実はやっていることはとてもシンプルです。
傘やストックを持たずに片足立ちをすると、体がぐらっと傾いた瞬間に、もう片方の足や腕を思わず横に広げてバランスを取った経験があると思います。フラッギングはまさにそれをクライミングの壁の上でやっている状態です。空中に伸ばした足そのものには体重はほとんど乗っていませんが、位置を変えるだけで重心の軸がずれて、驚くほど体の振れが止まります。
覚えておきたい2種類のフラッグ
フラッグには大きく分けて2つのパターンがあります。どちらを使うかは、次に伸ばす手の方向と、今壁に乗っている足の位置関係で決まります。最初は「どっちだっけ?」と混乱しやすいので、名前よりも「体がどっちに回りたがっているか」を感じることを優先してください。
アウトサイドフラッグ(外側フラッグ)
使っていない方の足を、立っている足の外側(体の外)に伸ばして壁に添わせるか、空中でピンと伸ばすパターンです。たとえば右手でホールドを取りに行くときに左足だけが壁に乗っている状態だと、体は右回り(時計回り)に振られやすくなります。この時、右足を体の右外側に伸ばすと、振られようとする力と反対方向に重心が引っ張られて、体が壁に対して正面を保ったまま止まります。右手でハイステップから遠いホールドを取る場面で特に効きます。
インサイドフラッグ(内側フラッグ)
立っている足の間、つまり体の内側・軸足の裏側に反対の足を通して伸ばすパターンです。足を交差させるような形になるので最初は違和感がありますが、両足が近い位置にある課題、たとえば足置き場が少ない薄いスラブや、腰を壁に強く押し付けたいコーナー状のホールドではこちらが圧倒的に有効です。筆者も最初の半年はアウトサイドフラッグしか使えず、インサイドが必要な課題で毎回落とされていました。足を交差させる動きに慣れるまでに2〜3週間、意識的に練習した記憶があります。
実際にやってみよう:3ステップ練習法
ステップ1:ホールドを持たずに振れを感じる
易しい課題の壁の前に立ち、片足だけを低いホールドに乗せて、もう片方の足を外側・内側それぞれに伸ばしてみてください。ホールドは持たずに手は壁を軽く添えるだけでOKです。足の位置を変えるだけで腰の向きが変わる感覚を、まず体に覚えさせます。
ステップ2:簡単な課題でわざと多用する
普段ならフラッグを使わなくても登れてしまうような、グレードを1〜2段階落とした課題を選び、すべてのムーブで意識的にフラッグを入れてみましょう。「ここは本来いらないかも」と思う場面でも使うことで、どのタイミングで自然に使えるかの感覚が磨かれます。
ステップ3:動画を撮って振れ方を見直す
スマホで登っているところを横から撮影してもらい、手を伸ばす瞬間に腰がどれくらい開いているかを確認します。自分では「止まっている」つもりでも、実際には腰が壁から離れて開いていることが多く、動画を見て初めて気づく人がほとんどです。
初中級者がよくやる3つの失敗
1つ目は、足を伸ばすタイミングが遅いこと。手を伸ばし始めてからフラッグの足を動かすのでは間に合いません。手を伸ばす直前、できれば同時に足の位置を決めておく必要があります。
2つ目は、伸ばした足にまったく力を入れていないこと。空中に浮かせているだけでは効果が薄く、股関節から足先までわずかに張力を持たせる(つっかえ棒として"効かせる")意識が必要です。
3つ目は、腰の向きを足の動きと連動させていないこと。フラッグは足だけのムーブではなく、骨盤の向きを変えるためのムーブです。足を伸ばす方向に合わせて、お腹とおへその向きも壁に対して斜めに入れていくと効果が倍増します。
まとめ:フラッグは省エネで登るための武器
フラッギングは見た目が派手なムーブではないので後回しにされがちですが、覚えると腕の力を使わずに体の軸を安定させられる、いわば省エネムーブです。次にジムに行ったら、いつもの課題で一度だけ「ここでフラッグを使えたかも」と振り返ってみてください。きっと今まで力で押し切っていた場面が見えてくるはずです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際に技術を試す際は、経験者やコーチの指導のもとで安全を確保して行ってください。