「核心のムーブは分かっているのに、落ちるのが怖くて手が出ない」「高さのある課題になると、急に足が重くなる」——こんな経験、ありませんか。ボルダリングを始めて半年〜2年くらいのタイミングは、ちょうどムーブの引き出しが増えてきて、少し難しい課題にも挑戦したくなる時期です。でもその分、「怖さ」という壁にぶつかる人がとても多いんです。実は私も、初めて4級の高さのある課題に挑戦したとき、核心の一手前でピタッと固まってしまい、10分近く同じ姿勢で悩んだことがあります。今回は、そんな"怖さ"にまつわる5つの疑問に、先輩クライマーとして具体的にお答えしていきます。
Q1. 核心のムーブで「落ちるかも」と思うと、手が出なくなります
これは本当によくある相談です。結論から言うと、ためらいながら手を出す方が、思い切って行くよりも実は危険度が高いことが多いです。中途半端な体勢で止まってしまうと、バランスが崩れた状態で落ちることになるからです。
具体的な対策
まずウォームアップの最初に、低い位置からマットに自分の意思で飛び降りる「着地練習」を2〜3回入れてみてください。これを登る前のルーティンにすると、「落ちる」という行為そのものへの抵抗感が下がります。そして核心に入る直前には、一度ホールドを持ったまま深呼吸をして、心の中で(できれば小さく声に出して)「行く」と宣言してから動き出すこと。この"宣言"には、迷いを断ち切る効果があります。中途半端に止まりそうになったら、潔く手を離してマットに戻る、という選択肢も常に持っておきましょう。
Q2. 難易度とは関係なく、高さがあるだけで足がすくんでしまいます
これもよくある現象で、実はムーブの難しさへの恐怖と、高さそのものへの恐怖は、脳の中では別の回路として働いていると言われています。つまり、課題のグレードを落としても、高さへの怖さは別問題として残ることがあるんです。
具体的な対策
オブザベーション(登る前の観察)のときに、ゴールだけを見るのではなく「どこで一度止まって休めるか」「どこから降りるか」という"安心ポイント"も一緒に決めておくと、安心感がぐっと増します。さらに、普段登っているグレードより1〜2段階易しい課題を、わざと高さのある壁で登ってみる「高さ慣れトレーニング」もおすすめです。難しさのストレスがない分、純粋に高さに体を慣らすことができます。私自身もこの練習を数週間続けてから、高さへの抵抗感がかなり減りました。
Q3. 安全な落ち方(受け身)がわからず、落ちること自体が怖いです
落ち方を知らないまま高いところに挑戦するのは、不安になって当然です。逆に、正しい落ち方を体で覚えておくと、恐怖はぐっと小さくなります。
基本の受け身
基本は、膝を軽く曲げて足から着地する、着地の瞬間に後ろへ手をつかない、衝撃が大きいときは横に転がって力を分散する、の3点です。手を後ろにつくのは骨折などの大きなケガにつながりやすいので、「手は体の前か横」を意識してください。これをウォームアップ時の着地練習(Q1で紹介したもの)に組み込んで、毎回の登りの前に体に思い出させてあげましょう。頭で分かっているだけでなく、体が覚えている状態まで繰り返すのがポイントです。
Q4. 周りが平気で落ちているのに、自分だけ怖がっているのが恥ずかしいです
これは声を大にして言いたいのですが、恐怖の感じ方には個人差があって当然で、恥ずかしいことでは全くありません。むしろ、危険を察知する感覚がしっかり働いている証拠とも言えます。経験を積んだクライマーでも、課題や壁の形状によっては「今日はちょっと怖いな」と感じることは普通にあります。
気持ちが軽くなる一工夫
一人で抱え込まず、近くにいる人に「下で見ててもらってもいいですか」と声をかけてみてください。ボルダリングにビレイヤーはいませんが、誰かが見ていてくれるというだけで安心感が増すのは多くのクライマーが口にすることです。ジムのスタッフも落ち方のアドバイスには慣れているので、気軽に相談してみるのもおすすめです。
Q5. この"怖さ"は、完全になくなるものなのでしょうか?
正直にお答えすると、怖さが完全にゼロになることは、経験者でもほとんどありません。そしてそれは悪いことではなく、無茶な挑戦を防いでくれる大切なセンサーでもあるんです。目指すべきゴールは「怖さをなくす」ことよりも「怖さをコントロールしながら、必要な場面で一歩踏み出せるようになる」ことだと考えてみてください。半年〜2年という今の時期は、ムーブの技術と同時に、こうしたメンタル面の経験値もじわじわと積み上がっている最中です。焦らず、今日紹介した練習を少しずつ取り入れてみてください。
まとめ
怖さは、ボルダリングを続けていく上でずっと付き合っていくものです。だからこそ、無理に消そうとするのではなく、着地練習や安心ポイントの確認といった具体的な準備で、少しずつ"付き合い方"を上手にしていきましょう。次にジムに行ったときは、まずウォームアップで着地練習を1回取り入れてみる——そんな小さな一歩から始めてみてくださいね。