「最近、指がジンジンする」「前腕がすぐパンプして握れなくなる」「肩が重い」——ボルダリングを始めて半年〜1年くらいのタイミングで、こういう小さな違和感を感じ始める人はとても多いです。筆者もちょうどその時期、毎回のように指先に絆創膏を貼ってジムに通っていました。
今日は、ジムの受付やSNSでよく聞かれる「ケガ予防」にまつわる5つの質問に、できるだけ具体的にお答えしていきます。「そのうち治るだろう」と放置して長期離脱してしまう人を何人も見てきたので、早めに知っておいてほしい内容です。
Q1. 指が痛い。テーピングは巻くべき?
結論から言うと、「痛みが出ている指に、予防目的で漫然と巻き続ける」のはおすすめしません。テーピングには痛みを一時的に感じにくくする効果がありますが、靭帯や腱そのものが修復されるわけではないからです。痛みをごまかしたまま負荷をかけ続けると、後述する「指のパーリー靭帯損傷」のように悪化させてしまうケースが少なくありません。
目安としては、指の第二関節(PIP関節)の付け根あたりがピンポイントで痛む場合は、まず2〜3日クライミングから完全に離れてみてください。腫れや熱感がなく、軽い張り感程度まで引いたら、H字テーピングや指の根元を軽く固定する巻き方で負荷を分散させながら再開するのが安全です。痛みが1週間以上引かない、押すとズキッとする、腫れているといった場合は、自己判断せずスポーツ整形外科を受診しましょう。クライミング経験のある医師やトレーナーが近くにいれば、巻き方や休む期間について相談するのが一番確実です。
Q2. 前腕がすぐパンプして握れなくなる。これは普通?
これは初心者〜初中級者のほぼ全員が通る道なので、安心してください。前腕(特に指を曲げる屈筋群)は他の部位より小さく、血流がすぐに滞りやすいため、使い慣れていないうちは数手で「握れない」状態になります。
対策として効果的なのが、セット間のシェイクアウトです。腕を心臓より少し高い位置でブラブラさせるより、実は腕を下げてダラっと振る方が血が抜けやすいという人もいるので、両方試して自分に合う方を見つけてみてください。また、1トライごとに最低90秒、できれば3分ほど休憩を取る「レスト管理」を意識するだけで、同じ日のトライ数も質も変わってきます。パンプを感じたら「あと1手だけ」と無理に粘るクセがある人は、まずそこを直すのが先です。
Q3. 肩や肘に違和感がある。休むべき?
肩の違和感は、デッドポイントやダイナミックな動きで肩関節を大きく動かした後に出やすく、肘の違和感(特に内側のズキズキ感)は、引き手を多用するコース取りや、保持力に頼った引きつけで起こりやすい傾向があります。
見分け方の一つは「動かしたときだけ痛いか、安静時にも痛いか」です。動かしたときだけチクッとする程度なら、ウォームアップをいつもより念入りにして様子を見てもいいでしょう。一方、寝ているときや物を持ち上げただけでも痛む場合は、立派な「お休みのサイン」です。無理に通い続けて慢性化させると、数日の休みでは治らず、数ヶ月単位のブランクになってしまうこともあります。筆者自身、肘の違和感を2週間我慢して通い続けた結果、結局1ヶ月以上まったく登れなくなった経験があるので、ここは声を大にして伝えたいポイントです。
Q4. 爪が割れたり皮がめくれたりする。対策は?
これは地味ですがモチベーションに直結する悩みです。指先の皮がめくれる「フラッパー」は、ホールドのエッジで皮膚がこすれて起こります。応急処置としては、めくれた皮を清潔なハサミで整えてから、キズパワーパッド系の湿潤タイプの絆創膏で保護し、最低1〜2日は同じ部位に荷重をかけないのが基本です。
予防としては、週に1〜2回、入浴後など皮膚が柔らかいタイミングでヤスリやスキンケア用の爪やすりを使い、硬くなった角質を薄く削って滑らかにしておくと、めくれにくくなります。削りすぎると逆に薄くなって切れやすくなるので、「表面のカサつきを均す」くらいの軽さで十分です。保湿クリームを寝る前に塗る習慣も、乾燥によるひび割れ予防に効果があります。
Q5. ケガをしないための練習頻度の目安は?
個人差は大きい前提ですが、始めて1年未満の方であれば「中1日〜2日空ける」頻度が一つの目安です。指や前腕の腱・靭帯は、筋肉そのものより回復に時間がかかる組織なので、見た目の筋肉疲労が取れていても、腱の修復が追いついていないことがあります。
連日で通いたい気持ちはよくわかりますが、「今日はフィジカル(持久力やコアトレーニング)の日、明日はクライミングの日」のように分けるだけでも、指や前腕への負担は大きく減らせます。週3〜4回通っている方は、そのうち1回を「ゆるい課題だけを登る日」にするのも効果的です。
まとめ
ケガの多くは、ある日突然ではなく「小さな違和感を無視し続けた結果」として起こります。今日挙げた5つの質問は、どれも「初期サインを見逃さないこと」がポイントです。少しでも不安を感じたら、思い切って1〜2日休んでみる勇気を持ってください。長く楽しく登り続けるための一番の近道は、実は「ちゃんと休むこと」だったりします。