ジムで「ここ、ジャンプしないと届かないんだよな…」というホールドに出会ったことはありませんか?そんなときに必要になるのが「デッドポイント」というムーブです。名前だけ聞くと難しそうですが、仕組みを分解してしまえば初中級者でも十分に身につけられる技術です。今回は、私が何十回も壁から落ちながら体で覚えたコツを、できるだけ具体的にお伝えします。
デッドポイントって何?なぜ難しく感じるのか
デッドポイントとは、体が一番高く上がった「一瞬の無重力状態」でホールドを取るムーブのことです。ダイナミックムーブ(ダイノ)と混同されがちですが、ダイノは完全に体が空中に飛び出すのに対し、デッドポイントは足を壁から離さず、重心の移動だけで届かない距離を補う点が違います。
多くの人が苦手に感じる理由は、「止まる瞬間」を頭で理解していても、体がその瞬間を感知できていないことにあります。タイミングがずれると、ホールドに指がかかった瞬間にまだ体が上昇中で、逆に引き戻されてしまうのです。これが「デッドポイントは怖い」と感じる最大の原因です。
デッドポイントが失敗する3つの原因
原因1: スピード不足
腰を上げるスピードが足りないと、最高到達点そのものが低くなり、そもそもホールドに届きません。「そっと伸びる」イメージで取り組んでいる人は、まず思い切って下半身を使い切ることを意識してみてください。
原因2: 腰が壁から離れている
背中が反って腰が壁から離れた状態で踏み込むと、力が壁の外側、つまり自分を壁から引き離す方向に逃げてしまいます。踏み込む直前に、おへそを壁にそっと近づけるイメージを持つだけでロスがかなり減ります。
原因3: 目線が追いついていない
動き出す前にホールドを見ていないと、体が最高到達点に達した瞬間に手の位置を微調整できません。踏み込む前の0.5秒で必ず目標ホールドを見る、という順番を徹底しましょう。
デッドポイントの基本フォームを分解する
ステップ1: 構えの姿勢をつくる
軸足(踏み込みに使う足)の膝をしっかり曲げ、重心を低く落とします。このとき、取りに行く手と同じ側の足を軸足にすると、体が開かずに真っすぐ力を伝えられます。逆の組み合わせ(クロスの状態)になっていないか、一度足元を確認してみてください。
ステップ2: 下半身で生み出した力を腰に伝える
軸足を伸ばす力を、腰・背中を通して上半身に伝えます。ここで腕に力を入れて「引き上げよう」としてしまうのがよくある間違いです。腕はあくまでホールドを掴みに行くためだけに使い、体を持ち上げる主役は下半身だと考えてください。
ステップ3: 「止まる」瞬間に手を置きに行く
体が一番高く上がり、重力と上昇の力が打ち消し合う「ゼロ地点」が訪れます。このわずかな時間に、すでに狙いを定めていたホールドへ手を置きに行きます。狙いを定めるのは動き出す前、手を動かすのはゼロ地点、という順番を体に覚え込ませることが成功の鍵です。
練習方法:ジムでできる練習ドリル
ドリル1: 低い位置での「ゼロ地点」確認ドリル
足元に近い、低くて安全なホールドを使い、小さくデッドポイントする練習を繰り返します。高さを求めず、「体が一番高く上がった瞬間に手が止まっている感覚」を掴むことだけを目的にするのがポイントです。慣れてきたら、少しずつ距離を伸ばしていきましょう。
ドリル2: 目線とタイミングの分離ドリル
動き出す前に目標ホールドを3秒間見つめてから、目線を外さずにムーブを起こす練習をします。「見る」と「動く」を一連の流れとして体に馴染ませることで、実際の課題でも迷いなく手が出るようになります。
初心者がやりがちなNG例
よく見かけるのが、怖さのあまり着地点である足を壁から浮かせてしまうパターンです。足が浮くと力の伝わる道筋がなくなり、結局腕力だけで引き上げることになって余計に疲れます。また、成功させようと勢い任せに大きく動いてしまい、ホールドを叩いて弾いてしまうケースもよく見られます。最初は「小さく、正確に」を合言葉に、成功率を優先して練習することをおすすめします。
どんな課題でデッドポイントが使われるのか
デッドポイントは、傾斜が強くないバーティカルや薄かぶりの壁でよく登場します。垂直に近い壁では重心を上に運びやすく、ゼロ地点を作りやすいからです。反対に、強いかぶり壁ではゼロ地点そのものが作りにくく、デッドポイントよりもダイノ(完全に飛ぶムーブ)になりやすい傾向があります。課題を観察するときに「この壁の傾斜ならデッドポイントで届きそうか、それとも飛ぶ必要があるか」を見極める視点を持つと、オブザベーション(登る前の作戦を考える時間)の質がぐっと上がります。
私自身、ジムに通い始めて1年ほどの頃、傾斜のある課題でずっと腕力だけで強引に取りに行っていた時期がありました。コーチに「それは腕じゃなくて腰の仕事だよ」と言われてから、ステップ2の下半身から腰への力の伝達を意識するようになり、同じグレードでも明らかに楽に止まれるようになった経験があります。力任せで止まらないときは、フォームそのものを見直すきっかけだと捉えてみてください。
まとめ
デッドポイントは、恐怖心から苦手意識を持たれやすいムーブですが、分解すると「構え→下半身の力の伝達→ゼロ地点での手の配置」という3段階のシンプルな動作です。今日のジムで、まずは低くて安全なホールドから練習ドリルを試してみてください。繰り返すうちに、「止まる瞬間」が自然と感じられるようになってくるはずです。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。実際に技術を試す際は、経験者やコーチの指導のもとで安全を確保して行ってください。